2017/6/3の誰かの暮らし

2017/6/3 土曜日 東京(晴れ)27℃-17℃

 

先にお詫びをしなければいけないんですけど、 投稿フォームの整理をしなかったせいでどこからが2017/6/3の日記でどこからが2017/6/4の日記か分からなくなってしまいました。本当にごめんなさい。6/3に送ったはずなのに、載っていない! という方は6/4に載っていると思います。もし「これ6/3の日記なんですけど」と連絡してやってもいいという方は、twitterか投稿フォームにお便りいただければ助かります。ほんとうにごめんなさい。

 

 

 

#1

朝起きた時に今日がもうダメな日だと瞬間的にわかった。2日前くらいから首を寝違えてしまっていて、期待感と喪失感が起きたと同時に押し寄せる。最悪だ。今日は昼頃にセフレが来るらしい。彼女は僕と同じ23歳の小柄の女の子で、青山に一人暮らしをしていて、Cカップ、新卒で不動産屋に就職した。それくらいしか彼女の情報は知らない。こっちの情報も適当にはぐらかしながらごまかしごまかし話している。でも会うたびに体に慣れていってるのは、お互い感じているが言葉にはしない。セフレってそういうものなのか?彼女とセフレの違いってなんなんだ?とたまに思う。セフレよりの彼女とか彼女よりのセフレとかセフレの中のセフレとか色々多分ある。彼女と15時くらいに別れて、角川シネマ有楽町エリック・ロメールの『恋の秋』を観に行った。上映後に山崎まどかさんのトークもあって、なんとなく感じていたロメールの非二元論的な考え方に無意識に自分が共感していたのだと気づく。山崎まどかさんの著作は全部読むくらいのファンで偶像崇拝的なことを自覚的ににしていたから会うのが怖かったけど、とても色っぽくて美しい人だった。帰りの電車で本谷有希子の本を読む。最近は変な自意識もなくなって来て、本谷有希子みたいな人の本もちゃんと読めるようになってきた。多分これから適当にラーメンでも食べて録音したバナナムーンを聴きながら寝る。

 

*1

 

 

#2

恋人と付き合って1年経ったらしい。記念日自体に興味が持てないが何か言った方がいいかもしれない。でも、なんて何を言えばいいのだろう。きっと私は可愛げのある女の子にみられたい。だっていつも恋人は私に「彼女がブスじゃないって最高」「顔が可愛い」と言ってくれるから。ありがたいけど…けど…ね…しんどい。

とりあえず「今日で1年だね!いつもありがと♡」LINEで打ってみたものの躊躇ってしまった。

はぁ…思わずため息をついてしまった。「かわいい」ってなんだろう。「かわいい」ことが前提の世界。SNSの加工やら投稿をみても感じる。AV女優もスポーツ選手も容姿の可愛さが重視される時代。時々生きにくい。幼少期をブスと言われ、過ごしてきたからかなのか、このしんどさは。

 

結局、恋人には「おやすみ」とだけ打った。恋人との空間だけは生きやすくいたい。あなたが思う容姿での「可愛い」がなくなっても好きでいてくれる?

 

 

あー、半身浴してパックしてマッサージして新聞読んで寝よっと。

 

*2

 

#3

わたなべくんの文章、実はとても好きで毎回読んでるよ。人の日記を読むのって案外楽しいんだねと思ったので私も書いてみます。

 

今日はバイトに行った。就活の息抜きとかよく言われてるけど、新人が入ったせいで私の仕事量が爆発的に増えた。この働きぶりで私より時給が高い。イライラも爆発的に増大しました。

でも私は人に怒ったり、イライラを表に出すことはしたくないから、心にしまって、まずはコミュニケーションを取ろうとした。

「好きなもの何かある?バンドとか、アイドルとか。」「はあ。特にないです。」ウザ。

別に興味のない女の好きなものなんて知りたくないですけど、言葉のキャッチボールくらいしようよ〜。2個下ってこんなに扱いづらかったっけ。

就活を始めて、自分が社交的になれた気もしたし、実際知らない人と話したり、仲良くなることに抵抗は無くなってきた気がしてた。でもやっぱり合わない人と一緒に働くのとか話すの、めっちゃ嫌い。

私は合わない人と一緒にいるの無理だから、別に人に嫌われてもいいし、友達がゼロになってもいい。って思ってたら友達から「○○と一緒に働けたらきっと楽しいんだろうな。」ってラインが来た。

普通に泣けた。

話がまとまってないしあっちゃこっちゃ行ってるけどまあいいや。終わり!

 

*3

 

#4

 今日は家から一歩も出ていません。嘘です。さっき庭に出て空気を吸いました。なぜなら、渡邊さん(とこの企画と架空の本を作る企画)を知ったからです。

 最近私は彩度の低い文章を書く、サブカルというのか、とにかくかっこいい人たちのアカウントを見つけることに喜びを感じています。でも同時に同い年くらいなんだろうなあと思って。後彼女いるんだろうなとか思って。ずるいなあと思ったのでさっき庭に出て空気を吸いました。

  今日2時間半くらいテレビを見てましたが、ずっとNHKでした。ブラタモリで高校の修学旅行で行ったことのある倉敷をやっていてまた行きたいなあって思いました。その後指原が蔵前の万年筆のインクスタジオに行ってました。行ってみたい。万年筆のインクを色んな色を混ぜて作れるみたいです。

 それとNスペで祇園町のお茶屋の特集をやってました。祇園の閉ざされた、もう私には入ることのできない世界がすごく好き。女将さんは結婚してはいけないし長女に継がせないといけないのだそう。「ん?」ってなりませんか?未婚の母か養女をとるそうです。次の9代目の女将になると決まった方は45歳で、そのあとどうするのだろう、まだ娘さんがいないようでしたから。

 なんか最後涙が出ました。人の人生を覗くのってすごく尊いしいつも涙が出る感動する。でもなかなか自分の運命を綺麗なドキュメンタリーに描くことはできないよな〜とか思いました。

 

そんな感じ。

 

*4

 

#5

ズボンの試着をしたんだけど脹脛が入らない。

「こーれは無理だ。」

ポロッと出た一言がお父さんにそっくりで、思わず笑っちゃう。

後から聞いたら、その頃試着室の外にいた妹は服屋のお姉さんとお話中。

「そのズボン可愛い!今売ってるやつですか?」

言いながら、自分とお母さんの姿が重なっちゃって苦笑い。

血なのか時間なのか意識なのか、何がそうさせるのかわからないけど、なんかこう、家族だよな。

夜は家族みんなで、寝てたり起きてたりしながら『サマータイムマシン・ブルース』。

この前『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったからトラベル続き。

やっと登録したNetflix、重宝しまくりです。

 

*5

 

#6

この日記に何を書こうか考えていた、今日。

 

 

*6

 

#7

(注:ぼくのミスで、それぞれ違う方に書いていただいたやきそばの日記と恋人の日記を1つにまとめてしまいました。指摘していただいてありがとうございます。大変失礼なことをしてしまいました、本当に申し訳ないです。おゆるしください…ただ焼きそば-恋人という流れがすこし面白くてコメントしたので、このまま残させてください。もし不快で、消してほしい、ということであればお手数ですがまたご一報ください…)

 

あしたは地域のちょっとしたおまつりに出かけるから、昼飯に焼きそばをくう。

それでさっき冷蔵庫をのぞいたら、皿に盛られてラップをかけられた焼きそばが、おそらくあしたの昼食のために、冷えていた。

あしたは昼飯を家でくおうと外でくおうと、どちらにせよ焼きそばをくわねばならないのらしい。

 

今日は一日中、最近付き合い始めた人とどう別れるかについて考えていた。

 

自分と性格が少し似ているからうまくやっていけると思っていたんだけれど、よく考えたら無理に決まっている。どうしたら嫌な気持ちになるか分かるから生きづらい。

 

私は悪い女なので、彼氏がいる状態で他の男の子と関係を持つあの何とも言えない背徳感のようなものが好きだ。

 

最低だ。ほんとに最低。

だけど、たまらない。

 

明日も、明後日も、同じ事を考えて時間を無駄にするのかと思うと寒気がする。

 

こんな女、生きていていいんだろうか。

 

 

*7

 

 

#8

今日はいい日だったなぁ〜〜。
朝起きてお昼頃までタバコ吸ったり家の前の喫茶店のマスターに頼まれて電球変えたりして、お昼ご飯にはえびドリアを食べた。
彼女から髪の毛切った連絡とこれからデートしない?っていうお誘いがあったから了解の旨を伝えて新越谷駅に行った。ミディアムロングにしてパーマをかけた彼女はちょっと驚くくらい可愛くて、一目見てコメント出来なかった。
そのあと、彼女とレイクタウンに美女と野獣を観にいった。行く前からなんとなくわかってたけどやっぱり話の内容がわかってる映画とか物語ってつまらないしどれだけ女優が素敵でも退屈なことを再認識した。
そのあとサイゼリアで彼女と安いワインで乾杯した。お酒を飲んでほろ酔いになっている彼女もやっぱり素敵だったなぁ。
今は彼女が隣で寝息を立ててる中、1人でチーズをつまみにハイボールを飲んで幸せな気分で日記をつけてる。タバコ買いにいかなきゃなぁ

 

*8

 

#9

昨日の驚くほどなにもない一日のことを日記(活字)にするのが躊躇われるくらいには、僕の文章に対するリテラシーは高いしそれは信用するに足るものだと勝手に思っているのだけれど、実は今日も特に面白いことがあったわけではなくて、ただたんに書きたい書くしかないんだと、今の政治にいきりたつ若者のような青々しい気持ちになったのだからこうやってちまちま画面をフリップしているのだし、この一文目の冗長さと同じ、あるいはそれ以上にだらだらと続いていく日々のことを思えば、僕の愚行も一日くらいは許される余地があるのかなと思う。こういうことだ。「思ったことを書かせてくれ」。

 

6月3日のはじまりは真夜中だった。あたりまえだ。普通は寝る時間のはずだけれど、僕(たち)は飯田橋にいた。飯田橋のどこに? そう、映画館に。名画座は、侵すことのできない永久の文化的財産だ。飯田橋ギンレイホールに集う男女はその夜、疾走する馬車のあたりにたちこめる砂けむりに興奮し(ジョン・フォード駅馬車」)、ぎこちない動きをする身体に宿したアイロニーを感じ取って思わず泣いてしまったり(チャップリン「黄金狂時代」)、物語の内容とは別に、オーソンウェルズの登場になんともいえないムカつきを覚える(キャロル・リード「第三の男」)ことになった。たくさんの、特に劇的なことが書かれているわけではない日記を、大いなる愛で慈しみながら読むあの良心的な大学生だったら、そんなの家でみればいいじゃないと懸命な意見を述べるのかも知れないけれど、なにせ今日の僕たちの頭は悪かったからしょうがない。

 

一晩中映画を観たあとラーメンを食べ、そのまま二時間くらい喋った。恋愛のこと、勉強のこと、音楽のこと。なかでもイチオシは夜の公園で喧嘩をしていた男女の話。これは僕がおととい体験したことで、おととい唯一面白かったことだ。

 

夜の公園で喧嘩をしていた男女。極めつけは「いつもグズグズグズグズ! なんにしたって作業にとりかかるのが遅すぎるのよ! とっとと帰って!」という女性の捨て(決め)ゼリフ! 傍で聞いていて関係ないこっちが「うぅ…ごめん」となると同時に、なんとしても来週のゴダール特集(早稲田松竹)を観なければと思った。男性がその場を離れようとしたとき、なんと驚くべきことに「ちょっと待った! たばこ置いていきなさいよ」とさらに追い討ち。別れたあと、自分のあずかり知らぬところでたばこをふかし、「ダメな自分に浸っている『俺』」を想像するのも嫌だったのか。

 

男性が去り、ほどなくして苛立ちながら女性も去った。あとは黙って僕が立ち去ればそれでよいのだったけど、なにかこの事件に立ち会ってしまった者として、そのままのこのこ家に帰るのは違う気がした。違う気がしたから、その二人が座っていたベンチに近寄ってみると、男性のものと思われる携帯灰皿が残っていた。「LOVE NATURE」。

 

そう記された携帯灰皿の持ち主は結局、パートナーのことを愛しているのかはわからなかったけれど、安っぽい学園ドラマばりに現場のすぐ近くにいて、呑気な顔でスマートフォンなんかいじっていた。もうちょっと探すのに苦労させてくれ、ダメな男役としての演技は100点満点なのだから……。

 

やばいと思いますよ、自分でも。さっきまで最悪の雰囲気だったのに、その記憶がこびりついている携帯灰皿を男性に返そうと思ったのは。けれども男性は受け取った、お騒がせしましたなんてぬかしながら。さあ僕の役目も終わったかなと数歩歩いて、あることに気がついた。彼は携帯灰皿しか持っていない。こんなまぬけなことはないと僕は同情して、よせばよいものをタバコどうですか? とアメスピを差しむけるのだったけれど、そこはまあ普通の人、結構ですなんて言ってた。

 

こうして頭のおかしい就活生はやっと帰路についた。女性はなにがあっても怒らせてはならない。「女は女である」のだから。事件の目撃者は翌々日の6月3日未明、嬉々としてこの話を年下の友人たちに語るのだった。明日は我が身かもしれぬのに……?

 

*9

 

*1:セックスフレンドと別れてからロメールの映画観に行くって、それこそ映画じゃないですか? でも最後がラーメン食べてバナナマンのラジオに着地してるのがめちゃめちゃ生々しい。ぼくは本谷有希子は面白く読めるし好きなのですが、最果タヒは……つかれます。

*2:前にゼミで「かわいい」とはなんぞやという話に少しだけなったのですが、相手が途方もなさすぎてぼくは敵前逃亡しました。四方田先生? の本が出ていた記憶があるのですが、それを読んでも分かんないだろうな。

*3:実はとても好きということなので、ぜひその気持ちをぼくに直接伝えていただけると諸々助かります! 一緒に働けたら楽しいと言われるの、絶対嬉しいだろうな。言われたい。

*4:彩度の低い文章、とじぶんの書くものを評されたのがはじめてなので、ほほうと思っています。ぼくの暮らしはマジでちょうダサいのであんまり持ち上げないでくださいね。ぼくも祇園町の特集、見てました。あれお茶屋さんなんですね。旅館かと思ってました。ドキュメンタリーも暮らしに編集を加えたもので、諸々の効果を最大限まで引き出すための技術が色々凝らされているはずなので、撮られている側からすれば恐ろしいかもしれないですよ、案外。

*5:妹さん、すごい! 服屋の人とコミュニケーション取るのって、ぼくはいくつになっても緊張するんですけど。ましてや「それ売ってます?」なんて一生聞けないだろうなあ。Netflix、なんかテラスハウスとかやってるらしいですね。ぼくも見たいです。

*6:何を書こうか考えて暮らしていて、「何を書こうか考えていた」と日記に記して、他は抜け落ちちゃうのがすごい。そのうち「今日は呼吸をしていた」とかになりそうです。「なにもしてない」ってことは絶対にないですから、なにかやっていたことをそのまま書いていただければ面白いです。

*7:焼きそばに挟まれてたんですね。ぼく焼きそば好きだからどっちも食べそうだけどな。「くう」の漢字が開かれていて、なんだか不思議な心持ちがしました。食べもののこと書いて、恋人(?)のことを続けて書くのって、個人的にはすごく勇気がいることなんですけど、皆さんはガンガン書かれるので尊敬しています。

*8:美女と野獣』にしろ、もう内容が分かってる実写化作品って、個人的に捉え方が難しいんですよね。原作から物語を変えれば「原作レイプ」とか言われて叩かれるのに、変にアレンジ加えると進撃の巨人の二の舞になると。実写化作品、あんま見ないんですけど、『ピンポン』はめちゃめちゃ好きです。

*9:飯田橋のどこに? そう映画館に。」を見て、古川日出男みを感じたのですが、日記の書き手の方は意識していらっしゃるのかしら。指摘いただいている通り、ぼくは映画館が少しだけ苦手です……音を立ててはいけない暗闇の中で、口を開けて、みんな同じ方向を見ているのを俯瞰的に見るとやばくないですか? 家で観ることができるなら家で観たいなあ、と。